前の記事で完成させた1CD Linuxのシステムは、残念ながら実用的ではありません。 みなさんが、これから独自のLinux系OSを作成するための土台でしかありません。
本ウェブサイトでは、これから先の作業についての手順は書かれていません。 完成させたLinuxシステムを今後どう拡張していくのかはみなさん次第です。
今後の方向性を決めるのも、作業をするのもみなさんですが、以下に筆者が分かる範囲での情報などを掲載したいと思います。
本ウェブサイトではX Window Systemには触れませんでしたが、多くの場合でX Window Systemは必要になると思います。
X Window Systemをビルド・インストールするには、BLFSの資料が参考になるでしょう。 BLFSは、Beyond Linux From Scratchの略で、LFSに従って構築したシステムに、新たに各種ソフトウェア群を追加するためのプロジェクトです。
BLFSの資料を参考に作業を進めれば、それほど難しくなくX Window Systemを導入できると思います。 ただし、かなりの数のソフトウェアをビルド・インストールするため手間と時間はかかります。
本ウェブサイトで完成させた1CD Linuxのシステムは、データを保存することはできません。
ただし、透過ファイルシステムを使うことでルートファイルシステムを書き込み可能にし、書き込まれた内容は、/overlay/upper を通して参照できるようにしました。 /overlay/upper 以下をフロッピーディスクやUSBフラッシュメモリに保存できるようにすれば、1CD Linuxでありながら、利用者はデータを保存することができます。
データを保存する方法については、既存の1CD Linuxを参考にするのがおすすめです。 筆者が思い浮かぶのは、Devil Linuxです。
Devil LinuxはCDから起動することができ、起動時にフロッピーディスクやUSBフラッシュメモリを挿しておくと、そのメディアをデータ保存用として利用してくれます。
Devil Linuxの初期RAMディスクを解析して参考にするのがいいでしょう。
DistroWatch.comを見ても分かる通り、世の中にはたくさんのLinux系OSがあります。 当然、その中には、1CD Linux形式のものも多くあります。
パーティション操作やデータ救出に特化したParted Magic、PCをルータやDNSサーバなどのネットワーク機器として動かすためのDevil Linux、PCをNASとして構築するためのFreeNASやNas4Free、ペネトレーションテストのためのBack Track Linux、古いPCでも快適に動作させることを目指したPuppy Linuxなどです。
それらの隙間を縫って、隠れた需要を見つけることができれば、みなさんの開発したLinux系OSが世に出ることも可能かもしれません。
製作したLinux系OSを公開する場合には、ライセンスに注意してください。 ソースを修正した場合のパッチファイルの公開義務、付属文書の配布義務、コピーライトの表示義務などソフトウェアごとにライセンスが決まっています。
最後に、初期RAMディスクの展開方法を説明しておきます。 既存のLinux系OSを解析する場合などに必要になる作業です。
初期RAMディスクのファイルの形式には、initrd形式とinitramfs形式があります。 Linux Kernel 2.6からはinitramfs形式が使われるようになりました。
今では、おそらくほとんど見かけることのない形式だとは思いますが、一応展開方法を乗せておきます。
mv initrd.img initrd.img.gz gunzip initrd.img.gz mkdir -p mnt mount -o loop initrd.img mnt
見ての通り、SquashFSのマウントと同じくループバックマウントしています。
解説済みですが、再度掲載しておきます。
zcat initrd.img | cpio -i --make-directories